真冬のサンルダム放流見学

年始早々、放流情報が…

年明け1月4日に、国土交通省のTwitterよりサンルダムの試験湛水による放流の情報が舞い込んできました。この放流は非常に珍しいものなので見学へ行ってまいりました。

サンルダム概要

所在地:北海道上川郡下川町北町
河川:天塩川水系サンル川
目的:洪水調節、不特定・河川維持、上水道、発電
形式:台形CSG
堤高:46m
堤頂長:350m
流域面積:182.5平方km
総貯水容量:57,200千立方メートル

出典:サンルダム建設事業に関する説明会

サンルダムは台形CSGという珍しい形式を採用しています。
CSGとは”Cemented and Sand Gravel”の事で、直訳で「セメントで固めた砂礫」です。現地で比較的容易に採取できる材料をセメントで固める方法です。
既存のコンクリートダムと比較して、ダム本体の断面積を大幅に増やす代わりに材料の品質を落としてコスト削減を可能にしている形式です。

試験湛水とは

建設中のダムにおいて本体完成後に安全性の確認のため貯水する事を試験湛水といいます。この試験湛水では貯水池が空っぽの状態から満水まで貯め運用上の最低水位まで水位を落として、その期間中にダム本体や設備や貯水池周辺の安全性を確認します。この試験湛水をクリアしなければ管理へ移行できません。

ダムに設置する計測装置 河川管理施設構造令 第13条より

ダムでは上の表のとおり様々な計測器を設置しモニタリングしています。
サンルダムの場合は、堤高50m未満のコンクリートダムなので漏水量と揚圧力の計測を行いますが、台形CSGという特殊な形式であるため測量による変形も計測しています。
漏水量:基礎排水孔やコンクリートの継ぎ目からわずかに漏れる水量
揚圧力:岩盤にしみ込んだ水によってダム本体を浮き上がらせる力
変形:気温や貯水池水位の影響で変形するダム本体の形

試験湛水の期間中は1日1回の頻度で計測を行ってダムの安全性を確認しているわけです。

サンルダム試験放流

冒頭で少し触れましたがこの雪景色の中のきれいな放流は、非常に珍しいものでおそらくこの機会を逃すと二度と見ることは叶いません。水が流れているところは非常用洪水吐と呼ばれるもので大規模洪水の時に放流する設備です。

非常用洪水吐から放流する札内川ダム(2016年台風襲来時、北海道開発局WEBサイトより)

こちらは2016年に北海道へ台風が3つ連続で襲来した時の札内川ダムのライブカメラ画像です。このように大規模洪水では濁水による放流になり道路は通行止めで肉眼で見る事はまずできません。

サンルダム右岸より( 北海道上川郡下川町

前置きが長くなりましたが、こちらがサンルダムの試験放流の様子です。
台形CSGで緩やかな下流面勾配のためか、ダム本体への雪化粧の具合も良い。

貯水池の様子

貯水池はこの通り満水でダム本体は橋のようにしか見えません。取水設備付近は結氷防止装置があるため結氷していません。

水位がS.W.Lを示す量水標

水位を示す量水標は、サンルダムの満水位であるS.W.L( Surcharge Watar Level)のEL.179.22mに到達している事がわかります。ここまで水位が上がるような事態はこの試験の時だけだと良いですね。

サンルダム試験放流

最後に動画もどうぞ。雪積もる静けさの中、ダムによる人工の滝はとても美しく穏やかに流れていました。