1月のサンルダムに引き続き、福井県の河内川ダムでも試験湛水により貯水池が満水となり非常用洪水吐からの越流がありましたので見学にいってきました。
河内川ダムの場所はこちら。福井県と滋賀県の県境近く、若狭熊川の鯖街道 熊川宿から少し逸れたところにあります。東京方面から向かうには北陸自動車道の木之本インターチェンジから一般道を約1時間ほど、琵琶湖をぐるっと迂回する必要があります。
・洪水調節 ダム地点における計画高水流量250m3/sのうち、180m3/sの洪水を調節し、放流量を70m3/sにすることで下流域の水害を低減します。
・流水の正常な機能の維持 下流の既得用水の補給や河川環境の保全に必要な水量を確保します。
・特定かんがい用水 鳥羽川流域の水田へ最大0.36m3/sのかんがい用水を確保します。
・水道用水 若狭町へ2,592m3/日(0.03m3/s)、小浜市へ12,960m3/日(0.15m3/s)の水道用水を確保します。
・工業用水 若狭町(若狭中核工業団地)へ1,728m3/日(0.02m3/s)の工業用水を確保します。
嶺南振興局河内川ダム建設事務所 より引用
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/koutidam/index.html
ダム建設の目的はこちら。僕が注目した点は水道用水です。現在、小浜市の上水道はすべて地下水を水源にしています。地下水は地盤沈下やはん濫時の井戸の冠水や水質事故発生時に取水停止が長期化する可能性がある等リスクを抱えていますが、ダム建設によって表流水を利用できるようになる事で多水源化を図りリスク分散ができれば水道の安定供給につながります。河内川ダムが完成する事によって小浜市の水道は大きく変化するのではないでしょうか。
河内川ダムでは、自治体のダムでは珍しく試験湛水中の貯水位をTwitterで毎日投稿されていました。そもそも試験湛水中の貯水位を公開しないダムが多いので、越流を見に行きたい自分のような人には大助かりです。
ちなみに、今年は雪も雨も少なめだったため満水まで水が溜まるのは計画より遅かったようです。
さらに越流当日~翌日は見学場所を用意して様々なアングルからダムを見られるよう工夫されていました。 地元の有線放送で越流を告知したらしく、午前中は地元の方がひっきりなしに来訪し用意された駐車場はいっぱいに。ダムの天端を歩き、展望スペースへ上り、満水の貯水池に感嘆の声をあげる姿とみているとこちらもうれしくなってきます。なお、建設事務所によると約800名の来訪者があったようで、地元の方が多数来訪した試験湛水は他のダムではなかなかありません。
ダム左岸に3階建ての大きなダム監視所が作られ、屋上には展望スペースが用意されています。ダム軸より下流側から見下ろせるアングルは素晴らしいです。ダムによって水がせき止められて下流と貯水池で水位の差が出来ている。ダムの機能が分かりやすく見る事が出来るアングルです。
貯水池はもちろん満水です。ダムが竣工し運用開始されると、ここまで水位が上がるのは大規模な洪水の時だけです。穏やかに満々と水を湛えた貯水池を見る機会はこの時しかありません。
ダム直下からの眺めです。 ダムを越流した水がきれいなウロコ模様で流れています。 このウロコ模様は水理現象の一つでロールウェーブ現象(転波列)と呼 ばれるものです。 この美しい放流は試験湛水の時にしか見る事ができないでしょう。
直下へはダム監視所から約15分、高低差70m超を徒歩でいく必要があり、さすがにここまで来る地元の方はあまりいない様子でした。 しかも、まだまだ整備されていない状況で足元もよくないです。 こういうところにいるのは大抵、ダム関係者と報道関係者とダムファンくらいなもの。
今後は直下に駐車場を整備し、橋を架けダムを見学しやすくするとの事。見学用の整備に力が入っているのが分かります。
今後は最低水位まで貯水位を落としてダムの安全性が確認されるまでが試験湛水です。事故無く無事に竣工し、観光資源の1つとして、下流の水源池として、洪水対策の防災施設として、地元に大事にされるダムになっていくことを願っています。